【知識と知恵の違い】阪神大震災のボランティアで、京大生と左官屋の若者が対照的だった話
阪神大震災のボランティアで、京大生と左官屋の若者から知識と知恵の違いがよくわかったという投稿が反響を呼んでいます。
阪神大震災のとき、現役京大生が救援物資の在庫管理を担当。すべての物資の種類、数を把握し、1500名いる被災者の消費量を計算してどの物資がどのくらい不足するかを予測し、ボランティアに的確に指示を出すので「歩くコンピューター」と呼ばれ、被災者の子どもたちに人気だった。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
しかし1500人もの人たちを支える救援物資の膨大さ、しかも全国から送られる救援物資は、ダンボール箱を開けてみないと入数と種類も分からない。種類ごとに分別もしなきゃいけない。あまりの過労でぶっ倒れてしまった。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
新しい物資担当は、左官の若者(その京大生と同じ年)。
「とてもじゃないけどあの人のマネはできません。僕のやり方でやらせてもらっていいですか?」
人がいなくて代わりはいない。みんな、彼にお任せすることにした。その「やり方」は。— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
品物ごとに山を作った。服の山、毛布の山、ラーメンの山、ミネラルウォーターの山。面積が必要になるけれど、ざっくり山の大きさを見れば物資の在庫量が一目でわかる。「あの物資は3日もたないな、じゃあ今度はあの物資を確保してこよう」と、各ボランティアが自発的に動くようになった。
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来る物資は片っ端からそれぞれの商品の山に積んでおく、というルールだけ承知すれば、誰でも物資管理ができた。左官職の若者が物資管理の担当になってから、物資管理をする必要がなくなった。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
熱が下がり、京大生が現場に戻って来たときには、もう物資管理の必要はなくなっていた。彼は驚いていた。物資の種類と数は自分しか把握しておらず、どの物資がどれだけ不足しそうかということも京大生に聞かないと分からなかったのに、その必要がないシステムに変わっていたことに。
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なんでこのシステムを思いついたの?と左官職の若者に聞いたら「仕事でやってるんすよ」と。材木やクギなど、種類別に在庫管理して、誰の目にもどのくらいあるのかわかるようにしておけば、気づいた人間が補充するというやり方で在庫切れを防止してるらしい。なるほど。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
この事例から、「頭がいい」って何だろう?と思うようになった。学業に関してなら、その京大生は卓抜していて、同級生の私なんかはるかに及ばなかった。すべての物資の種類と量を把握し、消費スピードまで計算に入れるなんて芸当、私にはムリ。他方。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
左官職の若者が導入した「物資ごとの山」は、私も京大生の同級生も思いつかなかった。管理の容易さ、誰もが自発的に物資管理を行える機能性、何をとってもこちらの方が仕組みとして優れている。「頭がいい」というのは、なるべくシンプルな答えを出す力なのだな、と痛感した。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
阪神大震災では、それぞれの「個性」が大切なのだな、ということがよくわかった。左官職の若者は暴走族のボスを束ねるボスで、みんなやかましいバイクを乗り回す中、自分はチャリンコ(自転車)という実にコミカルなことをやっていた人物。コワモテおじさんが現れても圧倒可能。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
他方、シャキシャキ動かない、物静かな人なんだけど、その人がいると春風が吹いてるような、安心感がその場に広がる。みんなが青くなるような事態が起きても、その人がいると「ま、慌てても仕方ない。なんとかなるさ、なんとかしようやないか」と落ち着くことができた。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
件の京大生は、子どもたちからとても人気だった。この人は絶対裏切らない、という絶大な信頼感があったらしい。震災が起きてすぐ常駐し、ぶっ倒れるまで必死に取り組んだその姿勢が、絶対的な信頼感になったのだと思う。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
「お母さんからちゃんと料理を教えてもらっておけば良かった」と言いながら、絆創膏だらけの指で黙々と台所で食材を切り続けるボランティア。
被災者が暖をとれるよう、黙々と木材を割り、大型トラック分くらいの薪の山を築いたボランティア。実に様々な個性を発揮していた。— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
阪神大震災では、「ビバ!個性!ビバ!多様性!」と、心から痛感した。みんなが全体を見渡し、不足している部分をみつけ、自分がみんなのために最も役に立ちそうな場所を見つけ、そこで自分なりのパフォーマンスを発揮した。それぞれが個性を発揮し、その個性がかみ合って全体をなんとか動かしていた。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
何人かで山に登り、キャンプ場に着くと、自然と「水汲みにいくわ」「じゃあ僕らは薪を」「窯を作るね」「テント張っておく」「料理の下拵えしておくね」と、全体を見渡し、自分の仕事を見つけ、システムとして動く。これ、案外優等生ができなかったりする。ボーッと突っ立ったままだったり。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
阪神大震災で機能したのは、この力だったように思う。全体を見渡し、弱点、あるいは欠落してる機能を自分が補う、ということを、各人が自発的に行える力。これがあれば、社会人になってからでも通用するように思う。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
戦後まもなくの企業は、焼け野原になって物資も何もない中でビジネスを始めねばならなかった。学歴も専門家でもない人が「なんとかこの製品をモノにしなければ」と、外国製品を分解して調べたり、大学の先生を訪問して聞きまくったりして、なんとか形にしていた。「欠落」は自分が埋めねば、と。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
私は、学歴(学校歴)って、どうでもいいんじゃないかな、と思っている。全体を見渡して欠落を見つけ、その欠落を自分が埋めねば、と考える人間がたくさんいるなら、必ずどうにかなる。one for all, all for oneが実践できるチームは強い。阪神大震災は、使命感がたくさんの若者を変えた。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
全体を見渡し、欠落を見つけ、それを自分なりに補う。自力で足りなければ「誰か一緒にこの欠落補って!」と声を上げるだけでも良い。そうした人材を育てられたら、日本はまだまだムチャクチャ強いと思う。そして日本はたぶん、性分としてこれが合ってるように思う。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
ボランティアではなく被災者だけど、「私にはこれくらいしかできないから」と、毎朝ホウキで掃除していたおじいさん、いつも温かい飲み物を飲めるように火の番をしながらずっとお湯を沸かし続けてくれたおばあさん。何も言わず、寡黙だったけど、とても立派。こんな高齢者に、私はなりたい。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
今までにも何度か紹介したことのある話なのですが、なぜか今回バズりましたね・・・この話、伝聞ではなく実体験です。この避難所には家族で義援活動しました。
何かしら、皆さんのお役に立つなら幸いです。バズりましたけど、どうも自著を宣伝する気になりませんね。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
ずいぶんバズってますね。これまでにも何度か紹介してまして、今回なぜバズったのか、よくわかりません。
考えてみると、阪神大震災の経験が、その後の私の考え方に強く影響してますね。部下育成を考える時も、避難所のことを思い起こしながら書いていました。— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
子育て本も、どんな人間に育つとよいか、という視点において、阪神大震災での経験が大きく影響しています。学ぶことが好きであってほしいけど、現場力のある子に育ってほしい、と。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
イノベーションの本も、後で振り返れば簡単なことのようで、みんながなかなか思いつかなかった発想というのが現場では多くて、それをどうやったら打破できるのか、という問題意識は、阪神大震災で強化されたように思います。
— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
思考の枠をずらす、という四冊目の本も、阪神大震災では、視点を少しずらしただけで見え方がガラリと変わる体験を何度もして、それが大きな影響を与えています。
私の中で、阪神大震災は、人生を変えた出来事でした。— shinshinohara (@ShinShinohara) October 20, 2021
ネットの反応
そうだと思います。京大生も左官の兄ちゃんもそれぞれ自分が持ってる知識を使ってそれぞれの最適解(≒知恵)をキチンと導いたわけで、どっちの方が優れているとかではなくどっちもスゴイよね、という話ではないかと。
— DMAP (@dmap) October 20, 2021
常にに意識しておきたい考え方ですね
(特に色んな人との協力して何かをする時には)あと、品ごとに集める場合
補充は左から消費は右からというルールを追加すると良いかも— ワタナベ (@kami76507006) October 20, 2021
なんだっけ?アメリカが宇宙でも使えるボールペンをあたおかな予算かけて作り、一方ソ連は鉛筆を使ったみたいな
— 月下の魔女 (@w1oeOqqiidonsK3) October 20, 2021
攻殻機動隊公安9課のstand alone complexというチームワーク概念を思い起こさせる内容でした。
「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ」— Y2(手洗い・うがい・レモン酎ハイ) (@Yarsenal) October 20, 2021
現実的な作業として物事を見るか、数式に落として見るかの差ですね。数式として見たほうがいい段階と、作業として見たほうがいい段階がありますね。
— 設検討にMatlabをアサインして山奥で仕事ができりゃいいなと思うIl cintaranoさとー (@snjru) October 20, 2021
仕事(ケアマネ)と家族の介護に追われ、「一人で背負い過ぎ」と言われながらぶっ倒れた今の私に浸みる、本当にいいお話ありがとうございました。
もっとみんなに頼れる賢い人間にリニューアルしたい。😵— やす (@ZeraniumuYasuk1) October 20, 2021