三年前、とある法律事務所で電話営業をやっていたYoshitsu Takuma(@dramawrite442) さんが、社会で生きるということ、自分がやるべきことを見つけることができたお話です。
「助けてください。私、明日死ぬしかないんでしょうか」という電話を上司命令でガチャ切りして後悔した新卒の備忘録
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
この話には身バレしないためのフェイク、誇張があります。ご了承ください。
ですが、当時、聞いて、感じて、憤ったこの気持ちは本物です。
それを了承した方だけ付き合っていただけたら幸いです。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
3年前僕は、機会あって、某JR沿線の近くにある法律事務所で働いていました。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
ア〇ィーレ法律事務所とか一時期よくCMで「過払い金ありますか」とかのCMがあったかと思います。一時期、僕は法律事務所のコールセンターのアウトバウンド(問い合わせ後のコールバック)を行う業務を行っていました。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
顧客がネットで問い合わせる→折り返し電話→顧客の生計をヒヤリング→債務整理の可否判断→可能の場合(というか問い合わせる顧客は大体可能)書類を郵送して債務整理開始
という業務フローの前半を担う末端の仕事。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
電話をかけてくる顧客はみんな借金で困っている人。色んな人がいました。買い物中毒で、借金を増やしすぎた主婦。ギャンブル依存症で金を擦ったお兄さん。詐欺にあって200万円借金を負ったおじさん。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
電話をかけてくる顧客はみんな借金で困っている人。色んな人がいました。買い物中毒で、借金を増やしすぎた主婦。ギャンブル依存症で金を擦ったお兄さん。詐欺にあって200万円借金を負ったおじさん。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
全員が、例外なく人に相談しづらい暗い側面を持っていた。でもどの人も声は普通の人で、世の中借金で困ってる人結構いるんだななんて感心してました。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
コールセンター業務を始めて1ヶ月経った頃。
終業間際に一本の電話がかかってきた。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
電話を誰も取らない中、つい電話を取ってしまった。電話の主は女性。
年齢は60代くらい。「電話掛かってたんですけど誰ですか」なんて、不機嫌な声で言う。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
日中は、手あたり次第電話をかけているためその折り返し電話だろう。態度の悪い顧客は手慣れっこ。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
要件を伝える。すると、お母さんの態度が急変した。「え!?あ、はい!」なんて飛び上がるような声上げてさ。いきなり物腰が変わるからこっちまでびっくりしたよ。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
お母さんから「電話料金が掛かるので折り返し電話いただいてもよろしいでしょうか」と言われてしまった。ホントはこちらから言うべきなんだけど、何か藁にもすがるような声に圧倒されてしまった。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
これは、マジモンだ。この人、本当にお金が無いんだ。
そう思いました。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
すぐに折り返しの電話を掛ける。すると、すぐにつながった。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
身の上話を何度も交わす。「情けないんですけどね」なんて前置きを何度も聞いた。
借金を負った経緯。自分の子供の事。お母さんは、事業に失敗したところで病気になって働けなくなり、生活費で借金がドンドン膨れていったらしい。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
中々本題に入れなかった。お母さんは、本当に切羽詰まってて、「自分のことを聞いてほしい」という熱が一気に放出されてる感じだった。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
だけれど、債務整理をする上で一番重要な情報を聞こうとしたとき、返事に耳を疑った。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
自分が借りたお金をどこで借りたのか分からなくなってしまったと。
手元のキャッシュカードをバラバラにして捨ててしまったと。
怖くなってしまって、ついやってしまったと泣いてきたんです。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
僕が法律事務所で働いて初めてのケースでした。
言葉に詰まって対応に困るとお母さんが追い打ちをかけるように
「助けてください。私、もう明日死ぬしかないんでしょうか」
だなんて言うもんだから余計パニックになってしまった。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
だから、電話を保留にして上司に対応をお願いしたんです。
上司は、帰り支度が済んでいて、あとは事務所を出てカギを閉めるだけ。
「なんで電話取るんだよ」なんて事情を知らない上司に小言を言われつつ— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
僕は申し訳なさそうにするフリをして
「すみません、ちょっと分からないことがあってお伺いしたいのですが」
だなんて頭下げて事情を説明した。
今思えば、あの時すごく惨めだったな俺。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
そしたら素っ気なく一言。
「そいつ、債務整理できないから電話切れ」
だって。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
さすがに食い下がりました。
「それはちょっと待ってくださいよ」って
どうにかできることぐらい自分でもなんとなく分かってた。
「助けてください」
なんて言ってるのにその対応は無いだろうって。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
失礼のないように丁寧に。助けを乞うように俺は上司に頼んだつもりです。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
でも、めんどくさそうにしてました。
たぶん上司はどうすればいいのか知ってる事も分かってたけど
「マニュアル通りにやってくれ」の一点張りだった。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
マニュアルでは債務整理できない案件を、法テラスに案内することになっていたので仕方なく、おかあさんに電話でその旨を伝えると、
「法テラスがダメでここに来たんです!」
と、もうくしゃくしゃの声で訴える。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
万事休す。
泣いてすがるお母さんと不機嫌な上司の板挟み。
頭抱えたいのはこっちだよ畜生なんて思いながら
「すみません、すみません。もう一度法テラスに問い合わせてください」
って言って電話を切った。切るしかなかった。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
「無駄な残業はしないことになってるから終業間際の電話は取らなくていいよ」
なんて先輩面でヤレヤレ諭すもんだから、
「はぁ」
なんてマヌケな声が出た。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
なんかもう頭がホントに思考停止してる感じ。
その時は、あまり深く考えてなかった。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
でも、その日の夜。
グルグル頭が回転して寝られないんですよ。あのお母さんどうなったんだろうかって。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
別に悪いことをしたわけじゃない。でも、もしかしたら
「助けられる人を助けなかった?」
っていう考えがグルグル回るんです。
それは、まさに天井裏に張り付く現実だったんです。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
「助けられる人を助けなかった?」
仕事は真面目だったつもり。借金で困ってる人を救うための立派な仕事だとも思っていた。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
でも、明日、あのお母さんが自殺したとしたら誰の責任だ?
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
そう考えたら、怖くなってしまって眠れなかった。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
後々、調べて分かったことがあります。ここまでの話を聞いて、疑問に思った方もいたかと思います。『紛失した借入先を調べる方法ぐらいあるだろう』と。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
そうです。あります。
完全に、僕自身の知識と経験不足でした。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
信用情報機関のJICCやCICに郵送で必要書類さえ用意すれば借入先の情報開示をすることができます。僕は、この旨を伝えるべきだった。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
例えば、あの電話の時に、信用情報機関で借入先を調べることができる旨を伝えることができたら、それだけでも、あのお母さんは首の皮一枚繋がったのではないか
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
借金を無くす事は出来ない。債務整理できるかどうかも分からない。
でも、最善の策を提示することぐらいできたと思う。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
あの時、電話を取るのが自分でなければ。上司が真面目に自分の話を聞いてくれれば、と思うと悔やんで仕方がない。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
あれから、あの仕事はしばらくしてクビになりました。理由は人員整理。
人を雇っておいて雇いすぎてしまったんだとさ。よく分からないな。
でも、ある意味それでよかったなと今でも思います。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
社会で生きるってこういうことなんだなぁ。と、ひしひし思い知らされました。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
さて、総括します。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
まず、借金抱えて返済の目途が立たなくなったら、すぐ債務整理するんだぞ!これは、お兄さんからの約束だ!借金なんてのは作ったその瞬間から「溝に捨てる金」が発生するんだ。クレジットのリボ払いとかも論外だぞ!
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
それと、自分が正しいと思ったことを貫きたいなら、貫かなきゃ絶対に後悔する。新卒のフリなんて糞くらえだ畜生!自分に正直に生きたいなら、誰かに頼るでもなく自分で生きていく術を見つけなきゃいけない。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
僕は、別に社会を恨んでるわけじゃない。非難してるわけじゃない。
一人で何か変えられるわけじゃないから。この『人心と乖離した社会』はおそらくこれからどんどん加速していく。この流れは誰にも止められない。— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
だからこそ、自分が正直に生きたい世界は、自分で選択するんだ。誰かに提供してもらうのではなく、自分で最初から作らなきゃいけないんだよ!
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
あれから、僕はお金の勉強を始めました。今度行われるFP(ファイナンシャルプランナー)の2級試験を受けてみようと思っています。今、最後の追い込みをかけているところです。まぁ、ただの趣味です。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
でも、きっと自分の身のためになることだと信じて頑張っています。
— Yoshitsu Takuma (@dramawrite442) 2017年5月11日
●ネットの反応
「死ぬ必要はありません」ということは、はっきり言ってあげても良かったかなとは思う。弁護士とか関係なく、一般常識として。
そんなに簡単(金になる)なら法テラスで袖にされることもなさそうだけどな。
『自分に正直に生きたいなら、誰かに頼るでもなく自分で生きていく術を見つけなきゃいけない』は酷い話だけど割と本当。大体の会社は薄暗いところも黒いところも抱えてるし倫理的な問題抱えずに仕事できる人・業種職種なんてほんの一握りだから。社会に出たての20そこそこの若者には酷かもしれないけど、倫理的に超ホワイトなとこに入る自信ないなら能力を自ら身につけるしかない。まあ凄い一芸あってすら完全に解決しはしないけどね……
仕事でやってる訳で、内容も内容なだけに一々同情していたら身が持たないんじゃないか そもそもそんな切羽詰まった状況にしてしまったのは借金拵えたその母親だし 割り切った方がダメージも少なくなるんじゃないかね
冷酷だけど、上司に感謝したほうが良い案件に見えた。当時情報開示の知識があったら切れずに蟻地獄に沈んでたんじゃないかな。FPも親身すぎると稼げなくて身も心も削ることになるから、趣味のままか稼ぐことが至上目的じゃない副業までが良いように感じます。
返すあてもないのに金だけとりあえず借りちゃう人に同情する必要あるのかな。どうなるかわかってて借りたんでしょ? 今までも泣き落としでどうにかなったから同じこと繰り返してるんでしょ? 同情しなくても勝手に何とかできるよ、そういう人は。心配するだけ心のリソースの無駄。
むしろなんで法テラスが断ったのかが気になるん。こういう(あえてストレートな書き方するけど)利益優先の弁護士事務所では厳しい、でも法律関連の救済が必要、って人が駆け込むべき場所よねぇ?